交通事故の被害者としては、不用意に示談に応じた結果、損害賠償をあまり請求できなかったとなると、その後の治療負担などの面で大きな苦労を背負うこととなります。
そのため、示談をするに際し注意すべきポイントを適切に把握することが重要です。
まず、注意すべきポイントの一つ目として、発生した損害が明らかになっていない段階から示談に応じないということです。
被害者にとっても、早期に示談がまとまることは有益なことですが、発生した損害が明らかになっていない段階で示談をしてしまうと、その後に生じた後遺障害やその他損害について、本来もらえるはずの賠償を受けることができなくなります。そのため、一般的には、被害者が示談交渉を開始するのは治療終了後、後遺症が残る場合は症状固定後とされています。
次に、示談書を必ず作成することが必要です。もし、示談書が作成されず、口約束のみの示談があったにすぎない場合、被害者は加害者が示談内容に沿った損害賠償金を支払わない場合に、その支払いを求める請求に苦労することとなります。
示談による損害賠償金を被害者が加害者に請求するには、示談がなされたという事実を被害者が証明しなければなりません。しかし、口約束の示談しかなされていないような場合は、たとえ本当に示談がなされたとしても、その証明は極めて困難となってしまいます。
そのため、こういった場合に示談があったことを客観的に証明できるよう、示談書という形で示談内容を保存することが必要となります。
また、示談による損害賠償金が支払われない場合、被害者は裁判を利用して加害者に対して請求をすることとなります。しかし裁判を利用するとなると時間と手間がかかるため、被害者にとって大きな負担となります。
このような場合に、示談書をあらかじめ公正証書化しておけば、被害者は裁判によることなく、強制的に加害者から損害賠償金を得ることができます。そのため、示談書作成の際に余裕があれば、このように公正証書として示談書を残しておくことが好ましいと言えます。
但し、相手が保険会社の場合には、公正証書の作成はしてくれませんので、公正証書化するのは、加害者本人や仕事中の事故の場合は加害者の使用者、加害車両の所有者などとの示談の場合です。